1人の男の涙

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県大会で優勝し、甲子園行きの切符を手にした瞬間、嬉しさや色んな感情が込み上げてきて涙を流す選手がいる


その姿を見て私も感動し、色んな苦労が詰まっているんだろうなと思って見ている


そんな嬉し涙を見て、私は忘れられないシーンがある


13年前の夏の高知県予選


決勝、明徳義塾高知商業


勝戦らしい好ゲームの末、高知商業9年ぶりの甲子園切符をつかんだ


その最後のマウンドに立っていたのが当時2年生ながら主戦投手として投げていた小松である


私は中学時代から彼と親しく、チームは違うが実家に泊めてもらうような仲であった


高校では一緒にやりたいなという話をしていたが、彼は高知商業を選んだ


1年の秋、彼はエースナンバーを背負い、秋の四国大会に挑んだ


秋の四国大会は勝てば春の甲子園に繋がる


準決勝

勝てば春の甲子園がほぼほぼ決まる

その大事な試合で彼は不甲斐ない投球をし、愛媛県の代表校に負けてしまう


彼は悔しくてたまらなかった

自分の不甲斐なさ、そして先輩達への申し訳ない気持ちしかなかった


主将にも謝った


「僕のせいです、すみません」


彼に対して主将は


「お前が投げないと勝てない、夏は頼む」


この言葉が彼の心に刺さった


そして夏の大会まで、彼はとことん自分を追い込んだ

あの四国大会の悔しさを胸に、とにかく来る日も来る日も走り込んだ

誰の指示でもなく、自分自身でメニューを決め、体をいじめ抜いた


もう先輩達には迷惑はかけられない

彼にとって四国大会での苦い記憶を消すのは、甲子園行きの切符以外には見つからなかった


俺が甲子園に連れて行く

そんな強い想いで挑んだ夏の県予選


彼はほとんどの試合に登板し、勝戦でも途中からマウンドに上がった


そして優勝の瞬間

最後のアウトをとったのは彼だった


整列を終え、ベンチに帰った彼は涙が止まらなかった

少し溢れた程度ではない


テレビ越しでも明らかに分かるくらい、負けチーム以上に涙を流し続けた


無理もない


一学年上の先輩達に期待され、その期待に応えようという想いで彼は走り続けた


しんどい事がほとんどだった

彼にしか分からない重圧もあっただろう


しかし彼はその重圧を乗り越え、大一番で輝いた

最高の投球をし、しっかりと結果で見せつけた


それは涙が止まらないだろう

全てが報われた想いだっただろう


彼の涙には応援してくれた人達、みんなの涙も詰まっていたのだろう


テレビ越しに見たそのシーンは今でも私の記憶には残っている


高校野球には1人の男をここまで成長させる何かがある


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